夏目漱石『それから』あらすじ

平岡夫妻

そんな代助の毎日に変化が訪れます。

学生時代の親友平岡が東京にやってきたのです。

平岡は代助の中学時代からの知り合いでした。

二人は特に学校を卒業して後一年間はほとんど兄弟のように親しくつきあっていました。

その時は二人はお互いにすべてを打ち明けてお互いを助け合うことを生きがいにしていたぐらいでした。

大学を卒業して一年後平岡は結婚をしました。

そして勤めている銀行の京阪地方に転勤となりました。

転勤してしばらくは平岡からしょっちゅう手紙が来ました。

しかし次第に手紙のやりとりが少なくなり、三年たった今では連絡を取るのは、年賀状の交換と引越しの知らせぐらいになってしまいました。

しか代助は平岡のことを完全に忘れてしまってしまったわけではなく、時折彼はどうしているだろうと思い出します。

そんな平岡から二週間前から手紙が届きました。

手紙はこんな内容でした。

その手紙には近々当地を引き上げて、御地へまかり越す積りである。

但し本店からの命令で、栄転の意味を含んだ他動的の進退と思ってくれては困る。

少し考があって、急に職業替をする気になったから、着京の上は何分宜しく頼むとあった。

この何分宜しく頼むの頼むは本当の意味の頼むか、又は単に辞令上の頼むか不明だけれども、平岡の一身上に急劇な変化のあったのは争うべからざる事実である。

東京にやってきた平岡と代助は一緒に食事をします。

代助と平岡の話はかみ合いません。

代助は平岡に二三日前に見に行ったニコライの復活祭の話をします。

それは夜の十二時、人々が寝静まったころに始まります。

幾千本のろうそくのともされたすばらしいお祭りを見た後に代助はたった一人、夜の町を歩き、夜桜を見ます。

そのときの幻想的な風景について平岡に語りますが、平岡はあまり興味を持ちません。

平岡は「そんなことをしていられるのは、君がまだ世の中に出ていなくて気楽だからだよ」と馬鹿にしたような態度。

代助は面白くありません。

こんな風に言い返します。

僕は所謂処世上の経験程愚なものはないと思っている。

苦痛があるだけじゃないか

世の中へは昔から出ているさ。

ことに君と分れてから、大変世の中が広くなった様な気がする。

ただ君の出ている世の中とは種類が違うだけだ

代助は平岡の京阪支店に赴任後の話を聞きます。

平岡は赴任後の当初は学んだことを実務にいかそうとしましたが、まだ新人のうちはそんなことはなかなかできません。

平岡が支店長に提案をすると支店長はかえって機嫌を悪くします。

支店長は平岡に青二才に何が分かるものか、というような顔をするのです。

しかし実際は支店長は平岡の言う学問的なことがよく理解できず、自分のよくわからないことを言う平岡が気に入らないのでした。

当初は支店長とぶつかった平岡ですが、次第にそれもなくなりました。

平岡はあえて支店長とぶつかったりせず、周囲と融和するように努めました。

それにつれて支店長の平岡への態度も変わります。

その頃から平岡は仕事や交際が増え、勉強する時間がなくなります。

また勉強がかえって実務の邪魔になるように思われることもありました。

次第に支店長の平岡への信任もあつくなり、支店長は平岡に万事をうちあけるようになりました。

支店長には部下に関という男がいて、相談相手にしていました。

ところがその関が会社のお金を横領して芸者遊びに使ってしまったのです。

それが曝露したので、本人は無論解雇しなければならないが、ある事情からして、放って置くと、支店長にまで多少の煩いが及んで来そうだったから、其所で自分が責めを引いて辞職を申し出た。

ということなのですが、なぜ平岡が責任を負わないといけないのでしょうね。

なにか代助には言えないような事情があるのかもしれません。

平岡は解雇になったばかりでなく、借金まで背負ってしまっています。

平岡は関が使い込んだ金を立て替えておいたというのです。

そして平岡は支店長にその金を借りて埋めたというのですが……

代助はなぜ支店長が関に直接貸さないで平岡を通すのかわからないのですが、なにか深いわけがあるようです。

代助は平岡にそれ以上は聞かないでおきます。

ともかく平岡は現在無職なうえ借金もちになってしまったのでした。

代助が平岡に「これからどうするつもりだい?」と尋ねると、平岡は「君の兄さんの会社に口はあるかい?」と尋ねます。

平岡には妻がいて三千代といいます。

夫婦には子供がいましたが幼くして亡くなりました。

三千代は病気がちで平岡によればもう次の子供は望めないだろうとのこと。

しかし平岡によればこんな大変な時は子供がいないのかえってよい、いや妻もいずに一人身のほうが気楽でよい、ということでした。