『坊ちゃん』あらすじ 感想|夏目漱石のおすすめ小説

最後はすっきり

翌朝昨日受けた傷が痛むのに耐えながら起き上った坊ちゃん。

新聞を開くと昨日の中学生と師範学生の喧嘩の記事が掲載されています。

そこにはこんな根も葉もない嘘っぱちが書いてありました。

なんと両校の喧嘩は山嵐と坊ちゃんが煽動したというのです。

学校に行くと教師たちは坊ちゃんをみてにやにやしています。

山嵐は坊ちゃん以上にひどいけがをしています。

教師たちは「もちろん私たちは君たちの潔白を信じている。新聞社には取り消しを申し込み済みだ」と言います。

赤シャツは私の弟が君たちを誘ったがゆえにこんなことになってすまない、と坊ちゃんと山嵐に謝ります。

帰りがけに山嵐は坊ちゃんに、赤シャツは臭いぜ、といいます。

赤シャツが弟を使って二人を喧嘩に巻き込まれるようにしたというのです。

証拠はありませんが、今までの赤シャツのしたことを考えればありえることでした。

翌々日に新聞に小さく取り消し記事が載りましたが、新聞はそれ以上のことはしてくれそうにありません。

校長に行ってものらりくらり適当に交わされます。

それから3日ほどしたある日の午後、山嵐が憤然とした様子でやってきます。

いよいよ時機がきた、おれは例の計画を断行するつもりだ、といいます。

山嵐は校長から辞表を出せと言われたそうです。

新聞に載ったのは同じなのに、坊ちゃんには出されていません。

山嵐は

「それが赤シャツの指金さしがねだよ。おれと赤シャツとは今までの行懸ゆきがかり上到底両立しない人間だが、君の方は今の通り置いても害にならないと思ってるんだ」

坊ちゃんは

「おれだって赤シャツと両立するものか。害にならないと思うなんて生意気だ」

山嵐は

「君はあまり単純過ぎるから、置いたって、どうでも胡魔化されると考えてるのさ」

納得できない坊ちゃんは翌日校長に詰め寄ります。

「なんで私に辞表を出せと云わないんですか」

校長はもっともらしい理由を言いますが坊ちゃんは当然納得できません。

今すぐにでも辞表を出したい思いでしたが、山嵐に止められてひとまずぐっとこらえることにします。

山嵐はいよいよ辞表を出して、いったんは町を去りましたが、すぐに人に知られないように町に引かえします。

その後は例の赤シャツが芸者と逢引する宿屋の向かいの宿屋にこもって見張りを始めました。

坊ちゃんも手伝いますがなかなか赤シャツは現れません。

8日目の夜、坊ちゃんは湯に入った後、町で鶏卵を8つ買いました。

下宿で出される料理が芋ばかりなので、これを食べて栄養バランスをとろうと思ったのです。

坊ちゃんは下宿には帰らず、山嵐がいる宿屋に行きます。

部屋に入ると山嵐がご機嫌で「有望、有望」と言います。

今夜の7時半に赤シャツのなじみの芸者が宿屋に入ったそうです。

赤シャツと一緒ではないのですが、山嵐に言わせれば、「赤シャツは狡いやつだから、念には念をいれて、二人そろって宿屋に入ったりしない。先に芸者に宿屋に行かせて、後から自分が行くだろう」というのです。

夜10時になりましたが赤シャツは現れません。

下の方から人声がしました。

「もう大丈夫だいじょうぶですね。邪魔じゃまものは追っ払ったから」正しく野だの声である。

「強がるばかりで策がないから、仕様がない」これは赤シャツだ。

「あの男もべらんめえに似ていますね。あのべらんめえと来たら、勇み肌はだの坊っちゃんだから愛嬌がありますよ」

「増給がいやだの辞表を出したいのって、ありゃどうしても神経に異状があるに相違ない」

おれは窓をあけて、二階から飛び下りて、思う様打ぶちのめしてやろうと思ったが、やっとの事で辛防した。

二人はハハハハと笑いながら、瓦斯燈の下を潜くぐって、角屋の中へはいった。

ついに赤シャツと野だいこが現れ角屋に入って行ったのですが、今後は二人がでてくるのを待たなければなりません。

朝の5時についに角屋から二人が出てきます。

二人は急いで宿屋を出て二人の後をつけます。

人気のないところにいくと、坊ちゃん、山嵐は、赤シャツ、野だいこをつかまえて、

「教頭の職を持ってるものが何で角屋へ行って泊まった」

「教頭は角屋へ泊って悪わるいという規則がありますか」

と赤シャツ。

「取締上とりしまりじょう不都合だから、蕎麦屋そばやや団子屋だんごやへさえはいってはいかんと、云うくらい謹直きんちょくな人が、なぜ芸者といっしょに宿屋へとまり込んだ」

「芸者をつれて僕が宿屋へ泊ったと云う証拠しょうこがありますか」
「宵に貴様のなじみの芸者が角屋へはいったのを見て云う事だ。胡魔化せるものか」

「胡魔化す必要はない。僕は吉川君と二人で泊ったのである。芸者が宵にはいろうが、はいるまいが、僕の知った事ではない」

確かにこれでは証拠としては不確かです。

坊ちゃんは野だいこに持っていた卵をぶつけます。

野だいこはへなへなと尻もちをつきます。

山嵐は赤シャツに拳骨を食わします。

「これは乱暴だ、狼藉ろうぜきである。理非を弁じないで腕力に訴えるのは無法だ」という赤シャツを山嵐はぽかぽか殴ります。

坊ちゃんも野だいこをぽかぽか。

二人は「おれは逃げも隠かくれもせん。今夜五時までは浜の港屋に居る。警察に訴えたければ訴えろ!」と言った後、二人してすたすたその場を去ります。

坊ちゃんはその後下宿に戻るとすぐ荷作りを始めて下宿を引き上げます。

その後山嵐のいる宿屋に行き、辞表を書くと、校長宛に郵便で出しました。

その後、夜6時の汽船に乗って町を離れました。

宿に警察は来ませんでした。

「赤シャツも野だも訴えなかったなあ」と二人は大笑いしました。

その後坊ちゃんは東京に戻りました。

山嵐とはそれ以来会うことはありませんでした。

その後坊ちゃんは街鉄の技手となりました。

清と一緒に住みます。

安月給で豊かな生活ではありませんが、清は満足そうでした。

しかし清は肺炎にかかってこの世の人ではなくなりました。

清は旅立つ前日、坊ちゃんを呼んでこう言います。

「坊っちゃん後生だから清が死んだら、坊っちゃんのお寺へ埋めて下さい。お墓のなかで坊っちゃんの来るのを楽しみに待っております」

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12