谷崎潤一郎『細雪』あらすじ


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初めに

細雪は昭和11年の秋から昭和16年春までの、大阪の没落しつつある旧家、蒔岡家の四姉妹の日常を描いた小説です。

主に次女幸子視点で物語は進行します。
(時折鶴子の婿辰雄、鶴子、幸子の婿貞之助、雪子、妙子視点になることもあります)

蒔岡家は大阪船場で古くから続く商家でした。

四姉妹の父親には女の子しかいなくて、長女鶴子、次女幸子とも養子をもらいました。

次女幸子は分家して芦屋に住んでいます。

蒔岡家の全盛期は大正時代でした。

大正の末期からは落ち目で、いまではかつては家来筋だった人にのれんを譲って、本家の当主である、鶴子の婿、辰雄は銀行員です。

給料以外の収入については書かれていないので、はっきりしないのですが、あまり生活は豊かではなさそうです。

つまり蒔岡家は今ではサラリーマンの収入で暮らしているサラリーマン家庭なわけです。

次女幸子の夫は経理師です。

幸子には悦子という女の子が一人います。

三女雪子、四女妙子はもともと鶴子と本家で暮らしていたのですが、本家の子供が多すぎるのと、また当主の辰雄と折り合いが悪く、ふたりはちょくちょく芦屋の分家の方に遊びに行くようになり、今では、ほぼ芦屋に住んでいる状況です。

三女雪子は内気で引っ込み思案な女性ですが、それほど目立った欠点もないのに三十すぎてもまだ結婚していません。

四女妙子は十代のときに駆け落ち事件を起した奔放な女性ですが、手芸や芸術の才能があり、人形作りで少なくない収入を得て、近くに仕事場のアパートを借りています。

目下主人公幸子の悩みの種は三女雪子と四女妙子。

三女雪子は内気すぎることをのぞいては欠点のない女性なのですが、なかなか縁談が決まりません。

それは四女妙子が十代の時に幼馴染の奥畑啓介と駆け落ち事件を起こしてしまいそれが新聞に載ってしまったことが原因の一つでした。

(卍の主人公も新聞に載ってしまいますが、昔の新聞は一般人のゴシップを掲載したんですね。上流家庭出身だと特に標的になりやすかったようです)

新聞は誤って雪子が駆け落ちしたと書いてしまいました。

それが雪子が縁遠くなる理由の一つでした。

また没落してサラリーマン家庭になってしまった蒔岡家ですが、まだ彼らは昔の誇りを捨ててはおらず、せっかく縁談があってもものたりなくなって断ってしまう。

家長が紹介した縁談をぎりぎりまで引っ張って、ほぼ決まりかけた頃に断ったことで相手を嫌な気分にさせてしまい、それ以来紹介しなくなる。

など様々な理由が重なって雪子は三十を過ぎてもいまだ未婚です。
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