『坊ちゃん』あらすじ 感想|夏目漱石のおすすめ小説

マドンナ

秋の日坊ちゃんは清からの手紙を読んだ後、湯に行くと途中でうらなり君に会います。

うらなり君と会話をしていると、そこに色の白い背の高い美人と、45,6歳ぐらいの母親らしき奥さんが現れました。

美人親子はうらなり君とあいさつしたと思ったら、まもなくそこに赤シャツも現れ、三人で列車の上等の車両に入っていきます。

坊ちゃんはあの背の高い美人がマドンナだと思います。

坊ちゃんも上等の切符を買いましたが、下等の列車に乗ったうらなり君がかわいそうで、上等の切符で下等に乗ったのでした。

坊ちゃんが風呂あがりに町をぶらぶらしていると二人の人影をみました、一人は男で一人は女でした。

坊ちゃんが近づいて行って影の正体を見ると、男の方は赤シャツで女はマドンナでした。

坊ちゃんは、うらなり君の許嫁をたぶらかして奪おうとしている赤シャツはやはり悪いやつでは? うらなり君の為に赤シャツに意見した山嵐はいいやつでは? と考えます。

赤シャツが信用できずに山嵐と仲直りしたいと思いながらも、現実はむしろ逆。

最初の下宿先のことで、坊ちゃんに怒っている山嵐と絶交状態なのに対して赤シャツとは表面的な付き合いをつづけています。

坊ちゃんがそれとなくマドンナのことをちらつかせると、赤シャツは絶対に認めません。

ある日坊ちゃんは赤シャツに呼び出されます。

「君はよくやってくれてる、生徒の成績が前任者の時代より上がっている」みたいなお世辞を言った後、また釣りの帰りの時のように「山嵐を信用しちゃいけない」ということを遠まわしに言います。

そして赤シャツから出た言葉は「今度転任者が一人いるから、君の昇給について校長に相談してあげる」というものでした。

そしてその転任者というのはうらなり君なのです。

うらなり君はこの町出身なのに、なぜだか日向の延岡に行くというのです。

坊ちゃんはなぜここの出身でここに屋敷のあるうらなり君がそんな遠くに行くのだろう、と不思議に思います。

下宿に帰って士族の老夫婦の奥さんから事情を聞きます。

するとこんなわけでした。

うらなり君の家はお父さんが亡くなってから暮らし向きが苦しくて、うらなり君のお母さんが校長先生に息子の給料を少し上げて下さい、と頼んだのです。

すると校長先生が「申し訳ないが、この学校は金が足りなくて息子さんの給料は増やしてあげられない、しかし日向の延岡なら空いた口があって、そこの教師になれば今までより5円多く上げられる。きっと気に入ってもらえるだろうから、もう赴任の手続きをしてしまった」と言うのです。

うらなり君は「遠くにいって給料が増えるより、ここにいて前のままのほうがよい」と断ったのですが、校長は「もう赴任の手続き済みだからどうしても行ってくれ、君の代わりの教師ももう決まっている」と言います。

坊ちゃんはすぐにこれは赤シャツの策略だと気が付きます。

赤シャツはなんてやつでしょう!

マドンナを手に入れるために、許嫁のうらなり君を遠方に追っ払おうとしたのです。

校長がなぜグルになるのかはちょっとわかりませんが……

「こんな理由で俺の月給が上がったって嬉しくもなんともない! いやこんな理由であがった月給なんて受け取れない!」

頭に血が上った、坊ちゃんは、赤シャツの家に押しかけます。

玄関には野だいこの下駄がありました。

奥から「もう万歳ですよ」という野だいこの声が聞こえました。

悪事が思惑どおりにいって「万歳!」というわけでしょう。

坊ちゃんが赤シャツに「月給はいらない」と言います。

赤シャツが理由を聞いたので、坊ちゃんはさっき下宿の奥さんから聞いた話をします。

赤シャツは「いや違う。うらなり君は自分の希望で日向に行くんだ」と言います。

坊ちゃんがそれを信じない様子をみせると、赤シャツは、

あなたのおっしゃる通りだと、下宿屋の婆さんの云う事は信ずるが、教頭の云う事は信じないと云うように聞えるが、そういう意味に解釈して差支えないでしょうか

そう言われると坊ちゃんは何も言えなくなってしまいました。

赤シャツはなんて口がうまいのでしょう!

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