目次
あらすじ ネタバレ
恋の始まり
昭和初期の大阪。
園子は若い既婚女性、法律を学んだ夫と暮らしています。
資産家の娘で夫は園子の実家に援助してもらいながら、研究者をめざしていたようですが、妻の実家に頼りっぱなしというのもいやで、弁護士開業をしたばかりです。
生活には全く困っていない園子は夫以外の男性と肉体関係のない恋愛をしていたようですが、それもまもなく破局。
しばらくぶらぶらしていました。
家で絵をかいたり、ピアノの稽古をしたり、歌を作ったりしていましたがどうしても過去を思い出してしまいつらくなってしまいます。
そこで園子は以前稽古をしていたことがある日本画を習いに天王寺にある「女子技芸学校」に通い始めます。
絵、音楽、裁縫、刺繍等を教える私立のカルチャー教室のような気楽な学校で、学費を払えばだれでも入学できるような学校でした。
朝は通勤する夫と一緒に家を出て、学校に行き、帰りも夫の事務所に行ったり、また夫と待ち合わせをして、その後観劇に行ったりします。
夫との仲も良好でした。
そんな時、ちょっとした事件が起きます。
授業でモデルを見ながら、楊柳観音の絵をかいていたのですが、校長先生が入って来て、「あんたの絵エはちょっともモデルに似ておらんようですな、あんたは誰ぞ、他にモデルあるのんではありませんか」といいます。
園子はその時言われてはじめて気が付くのですが、それは彼女の学校で洋画を学ぶ徳光光子に似ているのでした。
光子は船場の羅紗問屋の令嬢でまだ未婚、肉感的な美女です。
入学当初から彼女のことがなんとくなく気になっていた園子は無意識のうちに光子をモデルにしていたのです。
そのことを校長がにやにやしながら、遠まわしながらしつこく園子に言ってきます。
園子はついにキレてしまい、校長と喧嘩になります。
園子の絵が光子に似ているのは他の生徒たちにもわかったようで、また校長とほかの生徒の前で派手に喧嘩したため、このことは学校中で有名になってしまいました。
「園子と光子が女同士の恋人だ、園子と光子はできている」という噂が学校中に広まってしまいました。
実際は園子と光子は話をしたことすらないのですが……
園子は嫁入り前の令嬢である光子にそんな噂をたててしまったことを申し訳なく思い、謝りたいと思っていました。
しかし声をかけたりすればもっと噂になってしまうと考えます。
しばらく校内で光子にであっても、園子は申し訳なさそうに通り過ぎるのでした。
そんなある日、光子のほうから園子に声をかけてきます。
光子の方から、園子に噂が広まったことについて謝ってくるのでした。
主人公が訳を聞くと、光子はここでは話せないから、と主人公を校外のレストランに誘い、訳を話してくれます。
光子によると、このような事情だといいます。
光子は大阪でも有名なお金持ちの息子との縁談がありましたが、市会議員もそのお金持ちの息子と娘を結婚させてほしいと思っていました。
しかしお金持ちの息子は美しい光子に惚れていて、市会議員の方は負けてしまいそうです。
そこで市会議員は「女子技芸学校」の校長に頼んで、光子に悪い評判を流させたのでした。
また以前、校長が光子の父に寄付を頼んだ時、断ったことで校長は光子に恨みがあり、それも校長が光子の悪評を流した動機の一つでした。
そんな話をしているうちに二人はすっかり仲良くなり、またいたずら心もわいてきます。
もうそれならいっそのこと、わざと見せつけるように仲良くして、校長や学校のみんながどんな顔をするか見てやろう、と言いだします。
校長の奥さんが二人が一緒に奈良に行くのを見た、という噂を流していると聞いた二人は、それなら本当に奈良に行ってやろうと思います。
天気の良い四月の日曜日一緒に奈良に出かけました。
園子は光子と一緒に山に登り、そこで夜まで一緒に過ごします。
紫色に霞がった中、「好きな人と二人だけやったらこんな寂しい所の方がええわ」光子が言います。
園子は、「うちあんたと一緒やったらいつまででもここでこないしてたいわ」と思います。
光子によく似た楊柳観音の絵が書きあがりました。
園子が光子に見せると、光子は少し不満そうです。
光子は「自分の体はこの絵とちょっと違うから書き直してくれ」と言うのです。
主人公は光子にそれなら一度、光子の裸体を見せてくれと頼みます。
園子は光子を家に招きます。
二階にある、夫婦の寝室で光子は裸体になります。
「まあ、あんた、綺麗な体しててんなあ」と園子は光子の体に感嘆します。
その時以来二人は恋人同士になったのでした。
第三者
恋人同士になった二人は極彩色の封筒で熱烈なラブレターを交わしあいます。
いつもは園子は学校帰りは夫の事務所に行って一緒に帰っていたのに、近頃はいつも一人で先に帰ってしまいます。
また三日に一度は光子が家を訪ねてきて寝室で長い時間閉じこもっています。(絵のモデルという口実だがいつまでたっても絵ができあがらない)
そんなこともあり、夫は園子と光子の仲を疑いだします。
それが原因で、園子と夫は激しい夫婦喧嘩をします。
激高した夫は灰皿をつかみ、壁になげつけたほどです。
二人とも激しく言い争いますが、園子はかえってそれ以来居直ってしまいます。
次第に光子も大胆になり、二人で二階に閉じこもっているときに、夫が帰ってきても降りていきません。
夕食も二階で二人で食べることも多く、夜の10時ごろになって光子はようやく家に帰ります。
光子は夜中に主人公の家に電話をかけきて、園子は二三十分も話し込みます。
以前は、園子は光子からのラブレターを読んだ後は、タンスの引き出しにしまって戸締りをしていました。
それが今では読んだ後も、机に置きっぱなしです。
不思議と夫との間には波乱は起きません。
二人の夕食に夫も加わることもあり、このあたりから後に三角関係になる片鱗が見えてきます。
表面的に穏やかな日が続きますが、夢にも思いがけないような事件が起こります。
夜の九時過ぎに園子の家に電話がかかってきます。
「姉ちゃん、あてーあてや」というおれおれ詐欺みたいな電話をかけてきたのは光子でした。
光子は「いま大阪の南の方にいる料理屋にいて、風呂に入っていたところ着物を盗まれてしまった。困っているから着物を届けてほしい」と園子に頼みます。
いったい何が起こったのでしょう?
光子は、だれか男性と一緒らしいのですが、それは「姉ちゃんの知らん人やねん……」だと言います。
いったいどういうシチュエーションなのでしょう?
光子は「鈴木」という名前で料理屋に届けてほしい、と言います(光子の名字は徳光です)
しかも男物の着物も一式届けてほしいといいます。
光子は「直接料理屋ではなくても梅田駅で小間使いのお梅が待っているから彼女に届けてもよい」と言います。
男の存在を感じ取った園子はまず梅田駅に行って、お梅に会い、事情を聴くことにしました。
お梅によると光子は4月ぐらいから、恋人の男にちょくちょく会っていたようでした。
光子はお梅には「ちょっと用事を思い出したから」と言った後、小遣いをやって、町で遊んで待っているように命じます。
光子は戻ってきたときはお梅に「園子の家に行っていた」と嘘をついていたそうです。
光子は恋人の男と料理屋で会っていて、その時に着物を盗まれ、着物を園子に届けさせようとしたわけです。
園子はずうずうしい光子にあきれはてます。
しかし光子が裸で震えているかと思うとやはりかわいそうになり、料理屋に着物を届けます。
綿貫と光子の言い分
料理屋で主人公が最初に会ったのは光子ではなく、光子の恋人の男でした。
綿貫栄次郎といって、中性的な線の細い美男子でした。
綿貫によると綿貫と光子は去年の暮れ頃から愛し合うようになったそうです。
結婚も考えていたけれど、光子は大阪一のお金持ちの息子と縁談があったので、結婚できそうもありません。
そこに園子との女同士の恋愛の噂がたち、よい塩梅に縁談がなくなったそうです。
綿貫によれば、最初は光子は園子を利用している面もありました。
しかし光子は次第に園子の情熱に動かされて、深く園子を愛するようになったといいます。
「同性の愛と異性の愛はまるきり性質が違う。光子と綿貫の結婚と光子と園子の恋愛は両立が可能だ。もし自分と園子との関係を許してくれないなら、結婚しない」
綿貫によると、光子は綿貫にそう言って園子との関係を認めさせようとしたらしい。
綿貫も光子が自分との結婚と、園との恋愛を両立させるのは問題ないと思っているようです。
綿貫は、かといって自分と光子の関係を園子に隠しつづけるのはよくないと思っていたらしい。
いつか話さなければ、話さなければと思っていたところ今夜のことが起きてしまったといいます。
主人公はそんな綿貫の言い分を聞いて「馬鹿にしている」と思います。
園子は、「自分は光子に家の者に綿貫と会っているのを隠すためのアリバイに使われていたのだ。自分と女同士の恋愛の噂を立てることによってお金持ちの縁談を立ち消えにするために利用されていたのだ」と思います。
よりを戻す二人
光子に愛想を尽かした園子はそれ以来、光子と絶交します。
すっかり心を変えていい奥さんになろうとします。
しかしある日、病院の医者であると名乗る男から電話がかかってきました。
園子が光子に貸した避妊や中絶の遣り方を書いた英語の本(光子の知り合いが子供が欲しくないからという口実で光子が園子から借りたものでした)が原因で問題が起こっているというものでした。
「望まない妊娠をして困っていた女性がその本に書かれた方法を試したところ、大変なことになり、病院に行ったのだろう」と思っていると、光子が園子の家にやってきます。
光子は「妊娠をしたというのは友達ではなくて、自分だ」と言います。
綿貫の種を宿してそれを何とかして欲しい、と園子に頼ってくる光子に園子はあきれます。
この問題を解決するだけの為にと思って、光子に事務的な態度をとっていると、光子が苦しみだし、出血もします。
苦しみながら、もし自分が死んだら許してくれるか?とあわれっぽくいう光子に園子はほだされてしまいます。
間もなく、二人はすっかり元通りの馴れ馴れしさになってしましまいます。
実は光子が妊娠したり、苦しんだりしたりしたのは、園子とよりを戻すための芝居でした。
出血はおそらく血糊でしょう。
奇妙な誓約書
光子と元のさやにおさまった園子は前にも増して光子に情熱的になります。
光子が綿貫と会っていた宿屋で毎日のように逢引するようになったのでした。
宿屋には光子の両親や、園子の夫から電話がかかってきて、宿の人や光子や園子が応対しますが、二人の家族にはいっさいばれません。
光子は両親に宿屋の電話番号を光子の夫の弁護士事務所だと言ってあるのです。
園子も夫を「光子は妊娠して光子の父親のおめかけさんの家に匿われている」とだましています。
宿屋の電話番号は光子の父親のおめかけさんの家の電話番号だと偽っているのです。
園子は光子と逢引を重ねながらも、二人の間には綿貫の影がちらつきます。
光子や綿貫の言う「同性の愛と異性の愛はまったく別もので、光子と綿貫の結婚と光子と園子の恋愛は両立しうる」という言葉をもやもやしながらも納得しています。
光子は綿貫と園子を合わせて二人を仲良くさせようと仕向けたりもします。
あるとき園子は光子と町で遊んでいましたが、光子が用事があるといって行ってしまいます。
ああ綿貫と会うんだな、と園子は感づきましたが、特に問い詰めることもせずに光子と別れました。
園子はその後ばったりと綿貫と出くわします。
「光子さんが待っているでしょうから、早く行ってあげてください」と嫉妬しながらも、綿貫に促すと、綿貫は「お姉さんちょっと話しましょう」と園子をさそいます。
綿貫は園子に飲食店でぜんざいを食べたり街歩きをしながら、こんな話をします。
「光子みたいな美しい人は大勢の人に愛されるのはしかたない。
おたがいに光子をひとりじめしたいなんていう、さもしい考えはやめて、お互いが光子との恋愛を継続できるように二人で協力しよう。
園子と光子が恋愛を続けるには、光子がべつの男と結婚するよりも、事情を知っている僕と結婚をしたほうが都合がよいはずだ。
だから園子は光子と綿貫が結婚できるように応援してくれ」
園子はその時綿貫に「光子さんにより愛されているのは僕ではなくて園子さんです!」といわれ、嬉しくなってしまいます。
そのためでしょうか、綿貫に言われるままに次のような奇妙な誓約書を交わしてしまったのでした。
- 園子と綿貫は光子の愛が第三者に移ることのないように常に結束して防ぐ。
- 園子は綿貫が光子と結婚できるように力を尽くして助ける。
- 綿貫は光子と結婚後も光子と園子の関係を認める。
- 綿貫、もしくは園子のどちらかが光子に捨てられた場合は、片方も光子との関係を絶つ。
つまり綿貫が光子に捨てられた際は、園子は光子との交際をやめる。園子が光子に捨てられた場合は綿貫が光子との婚約を解消する。もし結婚後なら光子と離縁する。 - 綿貫も園子もお互いの承諾をえずに、光子と駆け落ちや、心中をしてはならない。
- 綿貫と園子がこのような誓約書を交わしていることを知ったら光子はいやがるであろう。綿貫も園子も片方の承諾を得ずに光子にこの誓約書のことについて話してはならない。
- 綿貫と園子のどちらかが、この誓約をやぶれば、片方はもう片方にあらゆる迫害を受けることを覚悟するべきだ。
- この誓約は綿貫と園子のどちらかが光子との関係を放棄しないかぎり有効である。
綿貫は園子に誓約書に血判を押すよう迫ります。
園子は誓約書を交わすこと自体は賛成しますが、綿貫が刃物をもって園子に迫るのに恐怖します。
半ば脅されるかたちで園子はこの誓約書に血判を押します。
明かされる真実
綿貫と誓約書を交わして次の日には、園子は光子に疑われてしまいます。
光子は園子が血判を押すために作った傷を見て、それが綿貫の同じ場所にもあったというのです。
光子はそれから園子に綿貫との関係について今まで園子に明かしていなかった秘密を打ち明けます。
光子と綿貫が出会ったのは二年前の夏でした。
二人はしばらくデートを重ねていたのでしたが、あるとき光子の友達が、綿貫の秘密について光子に話します。
綿貫は美男子で沢山の女性と交際をしていましたが、けっして深い仲になることはありませんでした。
また結婚することもありませんでした。
光子の友達によると、それは綿貫が子供の頃の病気か、生まれつきかはわかりませんが、女性と肉体の関係をむすぶ能力がない男性だからだといいます。
光子はそれが本当かどうか疑わしく思い、探偵に調べさせます。
探偵の調査の結果、光子の友達が言っていたことは本当でした。
さらに綿貫は光子と出会う少し前に、女同士の恋愛の習慣がある芸者と親しくなります。
それをきっかけに、綿貫は性的に欠陥のある男性でも女性に愛されることができることを知ったのです。
すっかり自信を取り戻した綿貫は、光子をくどいたのでした。
光子が綿貫にこのことを問いただすと綿貫は認めます。
光子はショックを受けますが、綿貫に未練があり別れることはしません。
綿貫は一般的なサラリーマンの息子ですから光子の両親が二人の結婚を認めるのは難しそうです。
万が一二人が結婚できても、綿貫の体については世間ではかなり広く知られていますので、光子の両親に隠し通すことも困難でしょう。
そんな折に光子にお金持ちの息子との縁談があがります。
綿貫はもし光子が自分以外の男と縁談に乗ったりしたら、光子に復讐するといいます。
光子は怯えながらある施策にでます。
なんと縁談を壊すために、自ら技芸学校の校長に匿名のはがきをだして、園子との女同士の恋愛の噂を流したのでした。
光子は綿貫からはもう逃れたいと思っているようです。
「いっそのこと綿貫と駆け落ちして新聞沙汰にして、そうしたら綿貫も自分に近づけなくなるのではないか? もう自分が恥をかき名誉を失うことも覚悟でそれをやってしまおうか?」
とまで考えています。
この時に園子は光子に綿貫との誓約書のことを打ち明けてしまったようです。
それから半月ほど後に園子の夫の所に綿貫が訪ねてきます。
綿貫は園子の夫に誓約書を見せて「あなたの奥さんは僕とこの誓約書を取り交わしたのに僕が光子さんとの結婚を邪魔する」といいます。
夫は綿貫を説得してその誓約書を預かり園子に見せます。
園子は夫に綿貫と誓約書を取り交わしたことを認めます。
夫は園子に今回は許すがこれからは心を入れかえてこのようなことをしないように、といいます。
しかし園子は光子との恋愛をやめる気なんてさらさらありません。
光子と園子は狂言心中を企てます。
二人で駆け落ちして、狂言心中をすれば夫も二人を引き離そうとは思わなくなるだろうと考えたのでしょう。
夫の目を盗んで、二人で海辺の宿に行き、睡眠薬を死なない程度に飲んで昏睡状態になります。
小間使いのお梅に二人が危ないことを夫に伝えさせます。
睡眠薬を飲んで半日後ぐらいに、一度目を覚ましますが、その後二三日は、意識がはっきりとしない状態でした。
目が覚めてから夫が助けにきたこと、光子の方が先に目が覚めていたことを知ります。
二人を助けにきた夫は、光子の世話をしながら、光子の無意識の誘惑に負けて光子とあやまちをおかしてしまいます。
三角関係
その後園子、園子の夫、光子の三角関係がはじまります。
光子と恋愛関係になった園子の夫は光子と園子の関係を認めます。
また園子の夫は光子と綿貫の関係を綿貫が一方的に悪いということにして光子の両親に話します。
光子の両親はすっかりそれを信じたため、光子が罰せられることはないのですが、かわりにそれを黙って見ていたのが悪い、ということで小間使いのお梅がクビになります。
光子は人に崇拝されることを史上の喜びとする人でした。
綿貫との関係はむしろ自分が脅されている状況でしたから、みじめに思っていました。
一方同性である園子に崇拝されることは彼女にとっては嬉しいことでした。
また今度は園子の夫が光子に夢中です。
光子は園子、園子の夫の二人の崇拝者を取り逃したくないと思っています。
園子と園子の夫はもともとあまり男と女としてはうまくいっていないのですが、光子は二人に嫉妬します。
二人に夫婦の関係を持たせないために、始終園子の家に来ていて、自分が帰るときは二人に睡眠薬を飲ませます。
光子に夢中な二人は光子に唯々諾々と従い、睡眠薬の飲み過ぎで、後で思い返してもよく生きていた、とおもうほど体調を崩します。
睡眠薬の飲み過ぎでいつも頭はぼんやり、睡眠薬が効かなくなるから食事はあまり食べない、と言う状態です。
それでいて二人は片方が光子とより親しくしているのではないか? と疑心暗鬼でお互いにさぐりを入れます。
園子はいつも光子が自分にだけ本当の睡眠薬を飲ませて、夫には偽の睡眠薬を飲ませているのではないか? 自分が寝ている間に光子と夫が愛し合っているのではないか? などと思い悩んでいます。
二人は光子は二人を睡眠薬で弱らせて、ついには亡き者にして自分はよいお婿さんをさがして結婚してしまうつもりなのではないか? などとも疑います。
そんなある日、今までの顛末がすべて新聞で報道されてしまいます。
初めはあまり権威もない小新聞の三面記事ですが、報道はどんどん大きくなります。
ついに身内でしか知りえないようなことも報道されるようになります。
犯人はクビにされたことを恨んだ、もと光子の小間使いお梅でした。
もう生きていけないと悟った三人は睡眠薬を飲み心中をはかります。
光子と園子の夫だけ心中を成功させ、園子だけ生き残りました。
園子は光子と園子の夫が、自分をだまして、自分だけ睡眠薬があまり効かないように細工したのでは? と疑って嫉妬にかられています。
光子が亡くなったのちも園子は光子のことを思い出すと恋しくてたまらないのでした。
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