谷崎潤一郎『人面疽』あらすじ 感想

映画『執念』

その映画のストーリーは下記のようなものらしいのですが……

舞台はある温かい、広重の絵の様になまめかしい、南国の海に面した日本の港……

おそらく長崎……

ヒロインは、入り江に沿った街道の遊郭に住む、あやめ太夫という花魁(おいらん)。

あやめ太夫は町中で第一の美女と歌われています。

彼女は毎日夕方になると、どこともなく聞こえてくる尺八の音に誘われて、湾内の景色を望む妓楼の三階に姿を現します。

そのあでやかな様子は、竜宮の乙姫のようでした。

あやめ太夫は欄干にもたれて、恍惚と尺八の音に耳を傾けます。

尺八の主は前々からあやめ太夫に恋い焦がれている、卑しい汚い物乞いでした。

せめて男と生まれたからには一晩でよいから、あやめ太夫の情けを受けて、心おきなくこの世を去りたい。

物乞いは人知れずそう願いながら尺八を吹き、あやめ太夫の顔を垣間見るのを楽しみに暮らしていたのでした。

ところであやめ太夫には恋人がいました。

それは昨年の春の末に、この港に碇泊したアメリカの商船の船員でした。

あやめ太夫は明けても暮れてもそのアメリカ人のことを思って、再会の約束をした今年の秋を待ちわびているのです。

そんなわけで、あやめ太夫は、物乞いの吹く尺八の音に感傷的になりながら、沖の帆を眺め物思いに沈むのです。

映画はこんな冒頭で始まります。

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