谷崎潤一郎『魔術師』耽美な名作

魔術師の庭

さあ魔術師の小屋の前にたどり着きました。

彼女はにこにこしてこう言いました。

さああなた、これから私達は試しに行くのです。

 

二人の恋と、魔術師の術と、どっちが強いか試してやりましょう。

 

私はちっとも恐くはありません。

 

私は自分を堅く堅く信じていますから。

そこは今迄のにぎやかで騒々しさとは、うって変わった、うす暗い陰気な雰囲気でした。

今迄の公園には一切見られなかった、木とか森とか水といった自然的な要素があります。

しかしそれらの山水は、自然を模して居るけれどもあくまでも人工的に作られたものでした。

自然の形をとった建築物といったほうが適切かもしれない。

そんな風景でした。

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