感想
夏目漱石の『夢十夜』 を思わせる小説。
夢らしい幻想的で美しい光景、ストーリーですね。
幼い子供を主人公にすることによってさらに効果を出しています。
誰でもこれと似たような夢を見たことがあるのではないでしょうか?
私はこの小説を読んで、懐かしいような、切ないような気分になりました。
後半の三味線を弾く厚化粧の女性、は東京の下町出身の谷崎潤一郎ならではのシーンですが、前半の暗い夜道を歩く場面、月が煌煌と輝く海辺の場面などは、万人の心象風景にうったえることでしょう。
よくもここまで、万人に普遍的な心象風景を描き切ったものだと思います。
夢を夢らしく書いた小説としては『夢十夜』以上の大成功だと思います。
目覚めた潤一が、三十代半ばというのがほろりとさせられませす。
夢の世界には時間はありません。
人は生涯、幼い子供の心を持ち続けて生きるのです。
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