空想の中、主人公と彼女の愛の会話
さて主人公は彼女と歩きながら、心の中でこんな彼女との会話を空想します。
(主人公)
君のような正直な、柔和な乙女が、この恐ろしい街の景色を、どうして平気で見て居られるのだろう
君のような正直な、柔和な乙女が、この恐ろしい街の景色を、どうして平気で見て居られるのだろう
(彼女)
わたしにはあなたという恋人がいるからです。
わたしにはあなたという恋人がいるからです。
恋の闇地に入った者には、恐ろしさもなく恥ずかしさもない。
(主人公)
僕にはとても、君のような優しい女の子の恋人になる資格はないのだ。
僕にはとても、君のような優しい女の子の恋人になる資格はないのだ。
君は僕と一緒になってこの公園に遊びに来るには、あまりに気高い、あまりに正しい人間なのだ。
僕は君に忠告するよ。
君のためには、二人の縁を切ったほうが、どんなに幸福だかわからない。
僕は君がこんな所へ平気で足を踏み入れる程、大胆な女になったかと思うと、自分の罪が空恐ろしく感ぜられる。
(彼女)
私は覚悟しています。
私は覚悟しています。
今更あなたに聞かなくても、私にはよくわかっています。
あなたと一緒に、こうしてこの町を歩いている今の私が、自分にはどんなに楽しく、どんなに幸福に感ぜられるでしょう。
あなたが私を可哀そうだと思ったら、どうぞ私を永劫に捨てないでください。
私があなたを疑わないように、あなたも私を疑わないでいて下さい。
空想の中の会話となっていますが、この小説自体が夢かうつつかわからない夢想的な作品です。
この二人の会話は、実際に起こったことと同じ、と考えてよいでしょう。